ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ


あらすじ

   1960年代後半。東ドイツ生まれの少年ハンセルは、自由を得て、ロックシンガーになる夢を叶えるため、アメリカ兵との結婚を決意。性転換手術を受けることとなる。しかし、股間には手術ミスで「怒りの1インチ(アングリーインチ)」が残ってしまう。渡米するも離婚し、しがないロックバンドを組むヘドウィグ。やがて17歳の少年トミーに出会うが、彼はヘドウィグのオリジナル曲すべてを盗んでビルボードNO.1のロックスターになってしまう。裏切られたヘドウィグは自らのバンド「アングリーインチ」を引き連れ、トミーの全米コンサートを追い、大会場の脇の、場末のレストランを巡業する。果たしてヘドウィグは、自分の魂である歌を取りもどし、捜し求めていた「愛」に出会うことができるのか・・・。



感想

   いやー、すげー、超感動。ヘドウィッグが僕の隣に座って、見つめられて、いじられて、触られて、もう超ドキドキ。死んでもいい。さいこーー!!きゃーーー!!って、とり乱しました。すいません。『ヘドウィッグ・アンド・アングリー・インチ』は以前映画になって、その感想を載せましたが、今回はミュージカル版です。というか、ミュージカルのほうが先で、それを元に映画が出来たので、こちらのほうがオリジナルなわけです。初めての日本上陸ということで、映画のヘドウィッグファンとしては待ちに待ったという感じでしたが、もう最高でした。最初日本版の主演が三上博史だと聞いた時は、正直「え?」って思いました。三上博史という役者は演技がうまいので、結構好きなんですが、どう考えてもヘドウィッグには合わないだろうと思ったのです。しかしいざ開幕してみると、そこにはまさにヘドウィッグが。演技しているというよりはまさにヘドウィッグがのりうつった感じ。ほんとすごかったです。途中客席に降りて来たりするんですけど、ちょうど僕の左横の席が一つ空いてて、そこに来た三上博史が「あら、一つ空いてるじゃない?」なんて言って、突然僕の横の席に座り、唄い、触ってくるではありませんか。真横でヘドウィッグの格好をした三上博史を見ることが出来、感動ものでした。しかもめちゃめちゃかっこよかったです。ええ匂いでしたわ。

   ストーリーに関しては以前映画を見たときに語りましたが、どちらかというと映画のほうが分かりやすいですね。僕はどちらかというとミュージカル版のほうが好きですけど。映画版はちょっとやはり説明しすぎというか、表現しすぎの部分があったんですけど、舞台版は基本的にヘドウィッグの一人芝居なので、周りの人などの無駄な部分があまり描かれなくて、より一層ヘドウィッグの悲壮な思いや心の叫びが表現されていました。舞台版を見ると、映画版では見えなかったことがちょっと見えてきて、僕はヘドウィッグ=トミーなんじゃないかと思いました。どちらかがどちらかの妄想なんじゃないかと。もちろんかたわれを探すというテーマなので別々の人間として描かれてはいるんですけど、トミーの存在というのはヘドウィッグの見果てぬ夢、彼が思い描くアメリカンドリームの象徴なのではないでしょうか。そういう夢を思い描きつつ、現実はしがないレストランでライブを開き、愛にも恵まれず、音楽も認められない。そういうものへの怒りを歌で表現しているわけです。ちょっと深読みしすぎかもしれませんが。映画の時も言いましたが、「The Origin of Love」はいいですね。ロマンティックです。

   構成としては、まさにライブって感じでした。ちょっとMCが長いライブみたいな。客席も大盛り上がりで、中には曲の途中立ってる奴とかいましたから(あれはどうかと思いますが)。曲も映画を何度も見てるし、サントラとか買ったんで、ほとんど知ってる曲なんですが、やはり生で聞くとすごい迫力です。鳥肌たちました。アップテンポの曲はそのまま英語で歌って、後ろに字幕っぽいのが出てました。あの演出はうまいですね。だってあの歌、日本語でガンガン歌われても多分全然聞き取れないでしょうから。スローテンポの曲は日本語に訳されてましたが、違和感もなく聞けました。

   主演は三上博史ですが、最高でした。うますぎる。ドラッグクィーンなので、セリフはおかま口調だし、派手な化粧に派手な衣装。この役をやるのはかなりのエネルギーと演技力が必要されてくるでしょうが、三上博史は見事としか言いようがありません。なんの違和感もなく、ヘドウィッグでしたからね。映画がちょっとヒットしただけに、みんなどうしても先入観が入ってしまうと思うんです。しかしあそこまで完璧にやられると、比較するとかそんな気すら起きません。完璧にヘドウィッグがそこにいました。とちゅうアドリブっぽく笑わせたり、歌もめちゃめちゃうまくて、三上博史さいこー!!て感じです。

   大きな仕掛けがあるわけでもなく、出演者がいっぱい出るわけでもないけれども、まさに音楽で聞かせる、音楽で訴えてくるというミュージカルで、やっぱミュージカルっていいなぁと素直に感じさせてくれました。ニューヨークでも観てみたくなりました。



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