リトルショップ・オブ・ホラーズ


あらすじ

   アメリカのスラム街。1960年代のある年の9月21日。スキッド・ロウ通りにある、倒産寸前の花屋『ムシュニク・スキッド・ロウ・フローリスト』の店先に、ヘンテコで珍しい不思議な花が置かれた。その花はお客を引き寄せ、みるみるうちに、店を繁盛させた。花屋の店員のシーモアは、憧れの同僚オードリーにちなんで、その花を『オードリーU』と名づけ、一生懸命世話をする。が、その花の正体は人の血を好む人食い花だったのだ。

感想

   久しぶりのミュージカルでしたが、なかなか楽しかったです。人食い花の話だと聞いた時、正直言って、どんな話だよ!!と思い、あまり見る気もなかったんですが、キャストとか演出家が日本版RENTの人たちが多かったこともあり、観に行ってきちゃいました。RENTみたいに心を深く打つものだとか、感動できるものではないけれども、娯楽エンターテインメントとして、とても面白く観ることができました。実は結構救いのない話なんだけど、それを後味良く終わらせてます。また決して暗くせず、とにかく明るく通すところもよかったんじゃないでしょうか。

    主役は今や「新選組!」の土方役で有名になった山本耕史です。彼はRENTの主役マーク役で、ミュージカルの実力は証明済みですので、何も心配はしてませんでしたが、さすがうまかったです。最も心配していたのは、相手役の上原多香子。彼女は演技はうまくないし、歌もうまくないので、ミュージカルなんて絶対ムリだろうと思ってましたが、思ってたよりは、よかったんではないでしょうか。なんか一皮向けたというか、開き直ったというか、そんな気がしました。頭の弱い、キャピキャピ系の女をうまく演じてたように思います。芸達者の小堺さんもいい味だしてましたし。人食い花「オードリーU」の声は和田アキコでしたが、迫力ありました。「ちょうだい!!」とか「腹減った!!」とか和田アキコにぴったりでした。  

   それにしても、よくこんな話をミュージカルにしようと思いましたね。ドンドン人食い花に食われていって、最終的には主人公まで食われて、誰もいなくなるわけですからね。普通はストーリーとして成立しないでしょう。しかもミュージカルなら尚更です。人食い花に食わせるために、歯医者を見殺しにする辺りからガラっと雰囲気が変わりますが、下手に暗くしたりしないので、見ていてすがすがしかったです。ただもうちょっと感情を揺さぶって欲しかったかなとは思いました。オードリーが食われる辺りが一番感動させる場面だろうけど、あそこももうちょっと盛り上げて欲しかった。笑いと泣かせの部分の振り幅をつけてくれれば、もっといい作品になっただろうと思います。

    花に人が食われる話なんて、果たしてどうなることやらと思ってましたが、うまくまとまっていました。「オードリーU」もどんどん大きくなってって、最後なんか、でかすぎです。人間の欲望を描いた、ブラックなテーマですが、そこをうまく娯楽エンターテインメントに仕立て上げた、2時間半十分楽しめる作品でした。



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