ラ・マンチャの男


あらすじ

   16世紀のスペイン。『ドン・キホーテ』の作者セルバンデスは教会を侮辱した罪で従者とともに地下牢に入れられ、宗教裁判を待つ身となった。早速ほかの囚人に原稿を焼かれそうになった彼は、即興劇で囚人を説得しようと芝居に打ってでる。

    セルバンデスは老人キハーナとなり、さらにキハーナは世の悪を滅ぼすためドン・キホーテは風車と戦ったり、あばずれアルドンサを姫と思い込み憧れてしまったりと奇行を繰り返すが、「見果てぬ夢」を追い求める姿にアルドンサや囚人達は勇気を与えられ、変化するのだった。 劇を終えたセルバンデスは自らも変わり、勇気を持って裁判に臨む。



感想

   まずは松本幸四郎の演技に魅せられてしまった。テレビドラマ「王様のレストラン」等で観ていた時も、いい役者さんだな、と思っていたが、『ラ・マンチャの男』での幸四郎は恐ろしいほどの存在感があった。ミーハーな私は観る前はほとんど松たかこが生で見られるということしか頭になかったのだが、終わった後は、「松たかこ、出てたっけ?」と思うほど、幸四郎がすばらしかった。

   作品自体も質の高いものであった。幸四郎が2役、実質3役やっているので、演劇慣れしていない人にはわかりにくいかもしれない。しかし、照明一つの変化で幸四郎ががらっと他の役に変わっていたり、小道具の移動で場面を変えたり、これぞ演劇のだいごみといえる。

   またこの作品の更にすばらしいところは、物語の構成にあると思う。ただのドン・キホーテの物語というだけではなく、作者の人生と重なり合わせて構成されている点が深みを増す要因であると言える。またドン・キホーテという存在を単なる狂気としてしまうのは違うと思う。自分の信じる夢を追うというドン・キホーテの姿は、誰しもが望む姿であり、キハーナはそのように生きる勇気を持ったのだと思った。この作品を観て、改めて夢を持っていきるということは素晴らしいことだと実感した。



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